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2024年8月20日
北米南米
USスチール株がアウトパフォーム、日鉄による買収実現への期待で

米鉄鋼大手USスチールの株価はこのところ、同業他社をアウトパフォームしている。日本製鉄による買収計画を巡って、政治家や労働組合からの反対が和らいでいるのではないかとの臆測が背景にある。

 

USスチール株価は過去1カ月に6%余り値上がり。バイデン大統領とトランプ前大統領が買収に反対を表明した後の下げを埋めた。競合のクリーブランド・クリフス、ニューコア、スチール・ダイナミクスは同期間に、軒並み2桁の下落となっている。

 

株価の対照的な動きは、バイデン氏が大統領選からの撤退を表明し、ハリス副大統領とミネソタ州のウォルズ知事が民主党の正副大統領候補に決まったタイミングと重なる。ハリス、ウォルズ両氏が日本製鉄の買収計画に対してどのようなスタンスを取るかは不明だが、市場では両氏が買収の可能性を閉ざさないかもしれないとの思惑が浮上している。

 

キーバンク・キャピタル・マーケッツの調査アナリスト、フィル・ギブズ氏は、ファンダメンタルズとは関係なく、おそらく買収が成立する可能性が高いか低いかに左右されていると指摘。「おそらくハリス政権が誕生すれば、買収が実現する見込みがあるとの希望や楽観論が強まっているのだろう」と述べた。

 

ウォルフ・リサーチのアナリスト、ティムナ・タナーズ氏によると、全米鉄鋼労働組合(USW)は買収計画に反対を表明しているが、反対姿勢を軟化させつつある組合員もいる。国内市場が低迷する中、十分なリソースを持つグローバル企業の傘下に入ることで、雇用維持の面でも一段と安心できるのではと考えているという。タナーズ氏は今月、米大統領選後に買収が実現する確率を従来の25%から約50%に引き上げた。

 

ハリス氏はバイデン氏よりもソフトな姿勢を公に示しているわけではない。ウォルズ氏は知事としてミネソタ州のUSスチール施設を訪問したことがあるが、買収計画について公の場で発言していない。ハリス・ウォルズ陣営はコメントを拒否した。

 

キーバンクのギブズ氏によると、USスチールの株価は総じて政治要因で動いているが、他の北米鉄鋼メーカーは市況悪化を嫌気して下落している。

 

https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2024-08-14/SI7W3ST1UM0W00