自動車メーカーのゼネラルモーターズ(GM)は1月31日、カナダの資源会社リチウム・アメリカズ(本社:バンクーバー)が進める米国ネバダ州タッカーパス鉱山でのリチウム開発プロジェクトに対し、6億5,000万ドルの株式投資を行うと発表した。タッカーパス鉱山は2026年後半に生産を開始する予定。GMは今回の投資を通じ、生産開始後の第1フェーズで独占的にリチウムの供給を受ける権利を得る。電気自動車(EV)の普及が進む中、バッテリーの主原料となるリチウムの確保は自動車メーカーにとって重要な課題となっている。
GMは、現在稼働中のオハイオ州ウォーレンにあるLGエナジーソリューションとの合弁会社アルティウム・セルズの工場のほか、2023年にテネシー州スプリングヒル、2024年にはミシガン州ランシングで、バッテリーセルの生産開始を予定している。そのほかの拠点を含め、稼働すれば合計で年間160ギガワット時(GWh)の生産能力を有することになる。また最近では、ブラジルの鉱業会社ヴァーレの子会社ヴァーレカナダ(本社:トロント)とニッケルの長期供給契約に合意するなど、バッテリー材の確保に向けた動きが目立つ。
リチウム・アメリカズは2007年に設立された企業で、現在は米国のほか、アルゼンチンでのリチウム開発プロジェクトも手掛ける。GMが今回投資するタッカーパスのリチウム鉱床はネバダ州北部にあり、約1,630万年前に形成され現在は活動を停止している1,200平方キロの大規模火山内に位置する。火山噴火時に形成されたリチウムを豊富に含む湖が再度の火山活動により干上がり、地表近くに鉱床が形成されたという経緯だ。リチウムの埋蔵量は米国最大で、炭酸リチウムに換算して年間8万トン、最大で100万台分のEVバッテリー用のリチウム生産が可能になると見込まれている。
2022年8月に成立したインフレ削減法では、EVや燃料電池車(FCV)の購入者が税額控除を受けるためには、購入した車両のバッテリーに含まれる重要鉱物が米国または米国と自由貿易協定(FTA)を締結している国であることなどが定められている。GMのメアリー・バーラ会長兼最高経営責任者(CEO)は今回の投資について、「北米およびFTA締結国のサプライヤーから重要なEVの原材料と部品を直接調達することで、サプライチェーンがより安全になり、バッテリーセルのコストを管理し、雇用を創出することができる」と述べている。
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