ニューヨーク発
2023年11月15日
米国石油大手のエクソンモービル(本社:テキサス州スプリング)は11月13日、電気自動車(EV)用バッテリーの主原料であるリチウムの生産を開始すると発表 した。同社は、2023年初頭にアーカンソー州南部にある12万エーカー(約486平方キロ)のスマックオーバー層の権利を取得済み。2027年に生産を開始し、2030年までに年間EV100万台超分の生産量を目指す。
今回のリチウム生産では、従来の石油とガスの掘削方法を使用し、地下約1万フィート(約3,048メートル)の貯留層からリチウムを豊富に含む塩水にアクセスした後、直接リチウム抽出法(DLE)により塩水からリチウムを分離する。DLEは、塩水を天日で濃縮する従来の方法とは異なり、フィルターで濾過(ろか)してリチウムを抽出する。環境負荷が低い上に回収率も高く、短期間での抽出が可能となる利点がある。
エクソンモービル低炭素ソリューションズ部門トップのダン・アマン氏は「リチウムはエネルギー転換に不可欠であり、エクソンモービルは電化への道を開く上で主導的な役割を担っている」「この画期的なプロジェクトは、数十年にわたるエクソンモービルの専門知識を応用し、従来の採掘事業よりも環境への影響がはるかに少ない方法で、北米のリチウムの膨大な供給を可能にする」と述べた。また、アーカンソー州のサラ・ハッカビー・サンダース知事(共和党)は州の南部について、石油、天然ガスを生産する上、エクソンモービルのような投資によってリチウムも生産することで「州の総合的なエネルギー首都だ」とした上で、「全ての分野におけるエネルギー戦略を支持する」と歓迎した。
なお、EV市場の拡大などを受け、米国内でのリチウム開発は徐々に進んでいるが、現在、生産まで行っているのは、米国化学品製造大手のアルベマール(本社:ノースカロライナ州シャーロット)によるネバダ州シルバーピークでの生産(年間約5,000トン)のみだ。そのほかは、カリフォルニア州ソルトン湖で、リチウム開発会社のエナジーソース・ミネラルズ(本社:カリフォルニア州サンディエゴ)が2025年に生産開始を予定(年間約60万トンの生産見込み)しているほか、同地域に複数の地熱発電所を所有するバークシャー・ハサウェイ・エナジー(BHE)・リニューアブルズ(本社:アイオワ州デモイン)や地熱・リチウム開発のコントロールド・サーマル・リソーシズ(CTR、本社:同州インペリアル)も開発を進めている(2022年7月13日記事参照)。
(大原典子)
(米国)
URL:https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/11/2564c38876c66f1f.html