大阪府立環境農林水産総合研究所などの研究グループは、昆虫アメリカミズアブ(ミズアブ)を原料とした飼料生産の実用化にめどを付けた。ミズアブの幼虫は、餌として食べた食品残さや家畜糞尿に含まれる窒素などを、体内にタンパク質や脂肪の形で高濃度に蓄積する。その特性から、飼料として活用が期待できる。輸入に頼る大豆などの飼料原料の代替や、未利用資源の活用につなげる。
ミズアブは体長2センチほど。北米原産とされ、国内でも東北以南の地域に広く生息する。飼料は、ミズアブの幼虫を乾燥させ粉末状にしたものなどを、大豆や魚粉に代わるタンパク質として家畜や魚に与える。海外では既に先行事例があり、国内でも飼料としての安全性が確認されれば普及できる見込みという。
食品残さや家畜糞尿を餌にミズアブを育て、幼虫を飼料として活用することで、食料生産の新たな循環型モデルを構築する。幼虫による食品残さの処理能力は、15日で減量率80%と高い。ミズアブを使った飼料の採卵鶏への給与試験では、卵の食味などへの影響はなく殻の強度が増すメリットがあったという。
環境省の事業を活用し、同研究所、愛媛大学、香川大学、国際農林水産業研究センター(JIRCAS)が共同研究に取り組む。
今後、農家や食品事業者らと連携し、ミズアブを育てる拠点を各地に広めていく構想を描く。同研究所は「持続可能な食料生産につながり、世界的な食料問題に対応できる技術。昆虫利用で新たなビジネスを切り開いていきたい」と展望する。
引用元:日本農業新聞オンラインhttps://www.agrinews.co.jp/p44495.html