米国のバイデン政権は2月15日、電気自動車(EV)用充電ネットワークの構築を目的に公表した一連の行動指針の中で、EVメーカーのテスラが同社のEV用充電ネットワークの一部をテスラ車以外にも開放することを発表した。バイデン政権は2030年までに新車の50%以上をEVと燃料自動車(FCV)にするという目標を掲げており、充電器の普及は喫緊の課題となっている。同政権は全米に展開するテスラの充電器を一般に開放することで、EVの普及を加速させたい意向だ。
エネルギー省(DOE)によると、米国内には現在、EV用充電器が約13万基設置されており、うちテスラ車専用の充電器が約2万8.000基となっている。また、直流(DC)急速充電器に限れば、テスラ用(約1万8,000基)が全米(2万9,000基)の大半を占める。テスラは同社専用のDC急速充電器「スーパーチャージャー」と、レベル2充電器「デスティネーションチャージャー」の一部ネットワークを開放する予定で、高速道路沿いのDC急速充電器3,500基と都市部や地方の施設に設置されるレベル2充電器を合わせて、少なくとも7,500基の同社充電器が2024年末までに一般利用可能となる。さらに、テスラはスーパーチャージャーの全米ネットワークを2倍以上に増やすと発表しており、利用者の利便性が大幅に改善されることが期待される。
バイデン政権は2021年11月に成立したインフラ投資雇用法に基づき、5年間で総額50億ドルの充電器設置などに向けた助成金プログラム「NEVIフォーミュラプログラム」の運用を開始している。2022年9月には全米50州と首都ワシントン、プエルトリコでのEV用インフラ導入計画を承認した。NEVIプログラムでは、テスラのような特定メーカー車向けの充電器は助成金の対象外だったが、一般に開放することで、同社による充電器の設置は今後、助成金の対象として認められることになる。
バイデン政権はテスラとの合意に加え、NEVIプログラムの助成金を受け取るために必要な機器の仕様や設置、運用に関する要件も発表した。例えば、充電器の稼働率が97%以上であること、充電器の最終組み立てが米国で行われていることなどが含まれている。また、部品の調達価格割合に関して、2024年7月以降、55%以上が米国内で製造される必要があるとした。
DOEのジェニファー・グランホルム長官は記者団に「このような政権全体の取り組みはEV普及を促進するカギとなる」と述べている(政治専門誌「ポリティコ」2月15日)。
URL: https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/02/2568d26f29edf154.html