使用済みの電子機器から金属を回収して再資源化する技術の普及に向け、政府は米国や欧州連合(EU)など14か国・地域の枠組みで連携協力を呼びかける方針だ。電子機器には銅やアルミニウムなどが使われ「都市鉱山」とも呼ばれる。資源のリサイクルを促進し、鉱物の供給網を強化する仕組みを構築したい考えだ。
西村経済産業相が28日、パリで開催される国際エネルギー機関(IEA)の「重要鉱物サミット」で演説し、表明する方向で最終調整している。
日本は8月に東南アジア諸国連合(ASEAN)と都市鉱山に関する技術協力で合意した。西村氏は今回、米国主導で2022年に発足した枠組み「鉱物安全保障パートナーシップ」に協力の輪を広げる方針に言及する見通し。この枠組みには日米やEU、豪州、韓国などが参加している。
日本はASEAN各国に日本企業の専門家を派遣し、パソコンやスマートフォンの解体、電子基板から金属を回収する方法を指導することを想定しており、成果を14か国・地域で共有することを視野に入れる。都市鉱山の活用に向けた試験事業(パイロットプログラム)の開始も検討する。
鉱山から採掘される金属や重要鉱物は、電気自動車(EV)などに使われるが、中国のシェア(占有率)が高い。中国は環境規制が緩く、原料を自国に輸入して製錬し、各国に輸出するなどして存在感を高めている。
一方、資源が乏しい日本では、優れたリサイクル技術を有する企業が多い。JX金属や三菱マテリアルなどは使用済み電子機器から不純物を取り除き、必要な金属を回収して再資源化する事業を手がけている。
都市鉱山の有効活用を図る日本にとって、民主主義や法の支配といった価値観を共有する同志国との連携は経済安全保障の観点からも有益と判断した模様だ。
URL: https://www.yomiuri.co.jp/economy/20230926-OYT1T50263/